先日、大人の社会見学をしてきました。
印刷の具体的な工程、手作業で行われている部分、製本工程、実際に動作している機械、などを目の前で見てきたのでその様子をレポートします。
今回の社会見学はこのブログでも度々登場している”いっちー(@icchi0625)”が企画してくれました。いっちーについてはこのへんとかこのへんの記事にも登場するので興味がある人は読んでみてね。
CampFireのGoodMorningでいっちーのパトロンになると今回のような社会見学に参加できますよー(いっちーのページ)。
見学させてもらったのはいっちーの友人、平井社長の印刷会社です。平井さんは日商印刷(株)という印刷会社を経営されている方で、いっちーとはHIU(堀江貴文イノベーション大学)仲間らしいです。
*平井社長の説明を聞く僕
僕はいっちーつながりで平井さんと知り合い、今回でお会いするのは2回目です(1回目の様子はこちらの記事をどうぞ)。あまり2回目という気がしなかったんですが、それはたぶん平井さんの優しくて話しやすい人柄のおかげかもしれませんね。
いっちーと僕以外にもう1人、久保田さんという方も参加しました。久保田さんもHIUの方です。
社長自ら説明してくれました!
まずは印刷物がどうやって印刷されているのかを平井社長自ら説明してくれました。これは贅沢!
まずは印刷のワークフローですが、ざっくりとこんな感じらしいです。
- DTP(Desk Top Publishing)
- 校正
- CTP(Computer To Plate)
- 印刷
- 製本
DTPではパソコンを使って印刷物の画像処理やレイアウトを設定します。その後、試しに印刷してみてレイアウトが崩れていないかなどをチェック(校正)します。校正が終わったら、CTPで刷版(さっぱん)を出力します。その刷版をオフセット印刷機にセットして印刷します。
校正の時に試しに印刷するのですが、ここでは本番用の印刷機を使うのではなく、校正用の印刷機(校正機)を用いるようです。校正機もDDCP(Direct Digital Color Profing, データから直接、色校正紙が出力できる。)やケミカル校正機(RGBで露光しカラー印刷紙に焼き付ける。)などがあるみたいです。
*打ち消し線部は4月29日に修正しました。
校正の時に試しに印刷するのですが、ここでは本番用の印刷機を使うこともあれば、校正用の印刷機(校正機)を用いることもあるようです。校正機もDDCP(Direct Digital Color Profing, データから直接、色校正紙が出力できる。)や大判のインクジェット校正機などがあるみたいです。
刷版というのは版画で言うところの彫刻した板のようなものです(僕の解釈では)。DTPで入力したデータを刷版に写して、それを印刷紙に転写していくイメージですね。一つの印刷物に対して刷版は4枚作ります。なぜ4枚かと言うと、色の3原色である赤(マゼンタ)、青(シアン)、黄(イエロー)と明暗をコントロールする黒(墨)の4色、それぞれについて刷版が必要だからです。
*データから刷版が作られる様子
例えば、ある刷版に赤色のインクをつけたあと、その刷版に青色のインクをつけてしまうと色が混ざってしまいます。赤色のインクをつけた後でそれを洗浄し青色のインクをつけるのは効率は悪いしコストもかかりそうですよね。
なので各色ごとに刷版を用意し順番に色をつけていくということです(たぶん)。
印刷機も枚葉印刷機と輪転印刷機があり、用途によって使い分けていました。枚葉印刷機は扱える紙サイズや紙厚の自由度が高い印刷機で、輪転印刷機はそれらの自由度は低いですが枚葉印刷機の数倍の生産能力があるみたいです。
オフセット印刷機を見学中の様子。これはイエローの部分ですね。画像だと見えにくいですが、中央部分に1~27くらいまで番号が振ってあって、それぞれの場所で色の濃さを調整できるようになっています(平井社長が手を伸ばしている先あたりに横に並んでいるのがその数字)。
印刷機に紙を送り出す最初の部分です。赤い吸盤みたいな部分から空気を吸い込んで紙を吸着し動かす仕組みみたいです。こういう機械を作る人はすごいですね。
刷版を印刷機にセットするのは手作業で行われていました。作業中は事故防止のために音楽が鳴るようです。
お試し印刷
印刷するときにはいきなり本番ではなく、まずお試しで印刷していました。DTPから刷版を作る時には毎回微妙な位置のズレが出たりすることがあるので、刷版ごとにクセがあるらしいです。
色味も湿度や気温によって微妙に変わるらしいです。そのクセや微妙な変化をチェックするためにお試し印刷するとのこと。
動画に写っている紙がお試し印刷で使った紙です。こんなに使うのか!
このチェックなんですが、なんと最終的には人間の目で行なっていました。僕も実際にチェック作業を体験させてもらったんですが、担当していたおじさんに「赤がちょっと上にズレてるでしょ?」と言われないとわからないくらいの微妙なズレでした。まさに職人技って感じでした。
8割程度は機械で自動化できているけど、こういったチェックなどの残りの2割はまだまだ人力じゃないとダメらしいです。
*微妙なズレなどをチェックしている場所
また、インクは粘性があるのでインクを充填した直後はインクが機械全体にまんべんなく行き渡っていない状態です。その状態で印刷しても綺麗に印刷されないので、お試し印刷の前に、いらない紙を印刷機に通してインクを機械になじませる工程も必要だそうです。
製本の仕組み
印刷が終わった後は製本です。製本には大きく分けて2種類あり、上製本(じょうせいほん)と並製本(なみせいほん)があります。
読んで字のごとくですが、上製本のほうが高級感がある製本です。
上製本は百科事典などのごく一部のもので、ほとんどの本は並製本とのこと。上製本は手間がかかるので一度買ったら長く使うような本しか使われないようです。
並製本はその綴じ方によってさらに4種類に分類されます。
- 無線綴じ
- あじろ綴じ
- 平綴じ
- 中綴じ
無線綴じとあじろ綴じは厚手でしっかりした本の時に使われます。最も簡易的なのが中綴じです。週刊誌は中綴じでジャンプは平綴じらしいです。週刊誌やジャンプなどは一度読んだら捨ててしまうので簡易的な綴じ方で十分ってことですね。
綴じたあとは仕上げに本の3方向を裁断します(三方裁ち)。
製本の工程はまず折り機で印刷後の紙を本のページの順番に折ります。その後、裁断する流れになります。
これは印刷後の紙を折り機で折っているところです。
これは印刷後の紙の余分な部分を裁断しているところ。工程の順番としては、上記の折り機の前の工程ですね。
面付けについて
本は、紙の片面で8ページ、両面で16ページを1つの単位として作られるそうです。紙の片面に8ページに正しい順序、向きで割りつける作業のことを面付けといいます。
印刷された1枚の紙には両面で16ページ分の印刷がされていて、それを4回折ることで1ページ分のサイズにしてから裁断します。裁断したときに本のページ順・向きになるように面付けをするということですね。そうすると、印刷後にいちいちページをそろえなくて済むのでとても効率的です。
紙の豆知識
紙についても平井社長が少し説明してくれました。
紙の規格はA版とB版があるのは皆さんも知っているかと思います。日本ではA版のことを”菊版(きくはん)”、B版のことを”四六版”ということもあるみたいです。
正確に言うと菊版や四六版はA版やB版よりもそれぞれ少しずつ大きいです。印刷や製本をしたときにAやBサイズを切り出しやすいようになっているっぽいです。(参考)
なぜそういう呼称なのか少し調べてみたんですが、菊版の方は、輸入元のアメリカでの紙の商標名が”ダリア(菊のこと)”だったことからその名前になったようです。四六版の方は大きさが横4寸縦6寸であることからっぽいです。詳細はこちらをどうぞ。
それぞれの対応は以下のような感じです。
A0:菊倍版
A1:菊全版
A2:菊半裁
A3:菊4裁
A4:菊8裁
A5:菊16裁
B0:四六倍版
B1:四六全版
B2:四六半裁
B3:四六4裁
B4:四六8裁
B5:四六16裁
ちなみに一般的な紙の密度は水の密度とほぼ同じということや、仕入れ値が150円/kgということ、紙の売買では全版1000枚を1連(れん)の重量をkgで表した単位で扱うことなども教えてもらいました。
たしかに、言われてみればコピー用紙とかをみるとg/m^2みたいな形で書いてありますよね。
さらにちなみにですが、製本過程で出る紙の切れ端は10円/kgでリサイクル業者に買い取ってもらえるそうです。
なぜA版とB版があるのか?
これも疑問だったので調べてみました。ざっくり言うとA版は国際規格でB版は日本独自の規格みたいです。
日本で紙の規格が決まったのは1929年で、当時、日本で流通していた紙のサイズを調べたところ、アメリカから輸入していた紙(A版)と日本独自に流通していた美濃紙(B版)の2種類あったことから、日本ではその2つの規格があるらしいです。くわしくはこちらをどうぞ。
なんかクイズ番組で出題されそうな知識ですね。覚えておくとちょっとドヤれるかもしれません。
梱包作業を体験
見学の最後に完成した印刷物の梱包作業をさせてもらいました。思ったより難しかったですが、2個目以降はけっこううまくできました。ガムテが自動で切られて出てくる機械があったんですが超便利でした。
ということで「大人の社会見学、印刷工場に潜入!」でした。約2時間半くらいでしたが、最初から最後まで平井社長が案内してくれました。いち企業の社長に2時間半も時間を割いていただき感謝しかないです。
ここまで間近で見られることはあまりないと思うのでとても良い経験になりました。平井社長、ありがとうございました。
いっちーも企画ありがとう。